隠者
隠者とは
右手に星が輝くカンテラ、左手に長い杖を手にした老人が、足元に視線を落とし立っている様子が描かれています。上から下まで身をすっぽりと隠すグレーの長いローブに、背景もグレーがかった青に雪山を思わせる白い地面、と全体的にとにかく地味で、控えめで、大人しく、静かな雰囲気のカードです。
でもこの人は謙虚なだけで、実は能ある鷹なんですね。生きてきた分の智恵と経験があって、その偉大な智恵がカンテラ、長年積み重ねられた経験が長い杖に表れているとも言われます。そして、その智恵と経験というのは、自分が実際に体験した様々なことから、自分なりに考え辿り着いた、自分なりの真実や哲学なのです。それはとても個人的で主観的なのかもしれませんが、現実に則したリアルさがあるのでしょう。
もう一つ、このカードから強く感じられるのが、孤独性です。ただ、孤独で寂しいとか、悲しいとかそういうのは一切ありません。むしろ、自らの意思でこの誰も何もいないところを選び、誰にも何にも煩わされない一人だけの世界を静かに生きているという感じです。俗世的な欲というのはもう一切ないでしょう。いわば、悟りを開いた、仙人のようにも見えます。
正位置であれば、今まで自分が積み重ねてきた過去の経験や知恵の中に答えがある、真実があるというような意味になります。また、隠者が一人でいるところからは、他者や社会と距離を置き、自分一人で自分自身と向き合うことの大切さというのも感じられます。あるいは、隠者のような、年上とかその道の先導者が良きアドバイザーやガイドとなってくれるのかもしれません。
逆位置であれば、過去の経験や知恵に固執するあまり、新しい物事への柔軟性や受容性というのが失われていく面が出てきます。また、自分一人の世界に閉じこもり過ぎて、頑固な偏屈者になってしまい、他者や社会から孤立し、孤独に陥るというような意味にもなってきます。頑なに固執している自分の考えや価値観というのが、実は浅はかで、真実からは程遠い場合もあるのかもしれません。
正位置キーワード
- 智恵・英知
- 過去の経験
- 謙虚
- 孤高
- 内省
- 静観
- 周到さ
- 賢慮
- 隠居
逆位置キーワード
- 頑固
- 偏屈
- 理屈っぽい
- 浅はかさ
- 頭でっかち
- 狭い視野
- 消極的
- 孤立
- 厭世
シチュエーション別解釈
現在の状況/隠者正位置
- 積極的に動かずに静観する
- 行動よりも思考のとき
- 静かに過去を振り返る
- 周りの人や環境から距離を置く
- 一人で内省している
- 自己内省が必要な時
現在の状況/隠者逆位置
- 過去や知識が邪魔をして動けないでいる
- 未知や未体験なことに対して躊躇している
- 周囲から孤立し独りよがりになっている
- 意地を張り過ぎたり頑固になっている
- 視野が狭くなりすぎて洞察力を欠く
- 本質的な問題を取り間違えている
人の気持ち/隠者正位置
- 一人でじっくり考えたい
- 今は動かずに状況を見極めたい
- 地に足をつけて慎重にゆっくり進めたい
- 大人しく静かに影を潜めていたい
- 思いは秘め行動にうつさない
人の気持ち/隠者逆位置
- 誰にも何にも関わりたくない
- 過去が気になって未来のことは考えられない
- 新しいことに積極的になれない
- 他の意見や価値観を受け入れられない
- 自分のやり方や考えを頑なに押し通したい
結果/隠者正位置
- 自分と向き合い内省することで答えが見つかる
- よきアドバイザーや指導者が助けてくれる
- 過去に積み重ねてきたものが問題解決の糸口となる
- 豊富な経験と知識を身につける
- 時間をかけてゆっくり進めることで確実な結果を得る
結果/隠者逆位置
- 自分の考えや価値観に固執して孤立する
- 頑固に意地を張り融通がきかない
- 周りとの協調や関わりを失う
- これまで信じてきたものや教えが間違いだったと気付く
- 未来を否定して過去にとらわれる
アドバイス/隠者正位置
- 自分と向き合うことで自ずと真理や答えにたどり着く
- これまでの経験や知識があなたを支える力となる
- 目立たなくても地味でも経験に裏打ちされた実力がしっかりと備わっている
- 誰にも何にも惑わされずに自分の軸をしっかりもって
- 忙しい日常や社会から離れて落ち着いた静かな環境に身をおいてみて
- その道の先達者にアドバイスを求めたり頼ってみて
- 表立たずひっそりと事を運ぶべし
- 感覚を鋭く必要最低限だけ選びとって
アドバイス/隠者逆位置
- 周りの人や状況を無視した独りよがりになっていないか少し振り返ってみて
- きちんと自分と向き合わなければ問題は解決できない
- 他人の意見や考えも受け入れる柔軟さを
- いつまでも考えているだけじゃ何も進まない
- もう知っていることだけではなく知らないことにももっと挑戦してみて
- 過去にばかりすがらず未来と向き合って
- もう一度事実と客観的に見つめてみて
瑠璃と琥珀 隠者について語る
瑠璃:
来ました、隠者ー!地味なおじいさんカードなのですが、なんかこのカードにはちょっと親近感があります。多分、基本社会では控えめで、静かに一人おうちで引きこもっているのが好きな自分となんか重なるものがあるのかな…?笑
まあ私と違って隠者さんは、もっと賢くて、智恵があって、何か物語で出てくるとしたら、困った主人公に重要なヒントとか教えを授けてくれるような人ですけどね。
琥珀:
瑠璃さんにはあんまり隠者なイメージはないなぁ〜、賢者なところはまさしくですが、控えめかは??笑なんだかんだ人が周りにいて慕われて場合によってはリーダーシップも発揮なさるので、あえてタロットで例えるとカップのクイーンて感じがしますね!
私は隠者はかの遁世者兼好法師のようなイメージです。山にこもって徒然なるままに世の中を観察しているような…。まさに世捨て人!
隠者は求められたらその知見や洞察力を必要最低限発揮するけれど、基本的に自分発信で投げかけることはなさそうで瑠璃さんの仰るように困ったときにヒントを与える、そんな役回りだと思います。
なんていうか俗世離れいている割に人の心奥深くを触るような人間ぽいカードですよね。
瑠璃:
え?!そんなに周りに人いないよ?!笑 リーダーシップもね、最近ようやく、私にリーダーの素質はない、ただ出しゃばってただけだ!と気付きました。
まあ私の話はさておき、確かに賢者にそんな積極性はなさそうですね。もう彼的には、精神的にも肉体的にも彼のゴールみたいなものに辿りついていて、これ以上更に何かする意欲も必要もないのかもしれませんね。
そんな仙人みたいな人だけど、「人間ぽい」。それは、彼の積み重ねてきたものが、現実の人間とか現実の物事がベースになってるからかなー?多分人間関係ももう要らないくらい、彼的にはすべてを経験し尽したのかな。
琥珀:
いろいろ体験してきたかー。そういえばこのタロットを語るシリーズの序章でも愚者と旅に出かけようと書いていますが、この隠者の姿は実世界で様々な経験し老性した愚者の様に感じますね!
無垢が人間の世界で希望に満ち様々なものを見聞して世の理を知り、生きる喜び悲しみ難しさを知って、あの陽気だった愚者が自分なりの悟りを開きあとはその肉体の死が訪れるまでひっそりと今までの経験を思い返しながらひっそりと暮らす…そういうイメージだと隠者のキーワードがすっと理解できる気がします。
そりゃ人生色々経験したんだから、あのご陽気パーティピーポーの愚者くんが隠者のような落ち着き具合になっても驚きません…笑
瑠璃:
同じ杖を持っているというところから、この隠者はあの愚者くんが成長した姿とも言われますものね。いやー、あの無鉄砲で後先のことなんて何一つ考えてなさそうな愚者くんが、こんな慎重で思慮深い地味で控えめな隠者になるとは。
でも確かに自分自身に置き換えても、色々失敗したり知識を得たことによって、頭で考えて行動を制御することが増えたような気がします。それは、無駄や失敗が減って賢くなったとも言えるけど、無駄や失敗を避けようとするあまり未知なことや違うものへの拒絶にもつながっているとも言えます。知恵と経験を積むことの良いところと悪いところ、それがまさに隠者の正・逆の意味になっている感じがします。
琥珀:
そうですね、未知を恐れて自分の殻に閉じこもってしまっているのは「愚かなこと」と言えますが、先ほど比較した0番「愚者」とは性質が違う事を理解する必要がありますね。他にも逆に洞察力を欠いた浅はかな悟りによって全く的外れな方向へ進んでいってしまっている状態を指すこともあるようにも思います。もう自分ではどうすることもできないんだ…と世捨て人の域を超え捨鉢的な考えに走って世を儚んだり、彼の持つカンテラの光が霞んでより暗い闇に沈んで行くような…
どちらにせよ逆位置になると自分の世界へ閉じこもり、外界を遮断してしまうという状態になっていること示していますね。
瑠璃:
うんうん、外界との遮断というのは、隠者のもう一つのキーワードですよね。一人でいることも、良い面・悪い面両方あって、琥珀さんの言うように、「どうせ…」みたいな感じで現実世界から逃げて自分の世界に閉じこもってるのは、否定的な独りよがりだけど、でも、現実世界の諸々に流されずに一人で静かに自分と向き合い対話するのが重要な時もある。それは前述の孤独とは違って、 そこから答えや真理が見つかるような、振り返りと内省、そして一人でホッと素に戻れるような大事な一人時間という面もあるように思います。いや、ほんと、一人時間は大事…!必須!
琥珀:
必須必須!!同じひとり時間でもこのニュアンスの違いを頭に入れておくとぐっと読み解きやすなりますね。ヤケクソ世捨て人おじさんか沈黙の賢者か…。 隠者に関して正逆はより自分の姿勢次第という感じがします。 (私は老後前者になっていそう!)
さて色々な経験を得てながーい旅をしてきた愚者くん、そりゃ静かに自分を見つめ返す時間も必要でしょう。しかし、彼の旅はたとえ肉体を離れてもまだまだ続くようです。以降のカードは今までよりも概念的になってきます。難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、タロットの素晴らしい点の一つが読み手の感性やインスピレーションを織り交ぜて占えるという点です。なので概念的になった分、より自分なりのオリジナル解釈を見つけて行きやすくもあるのでまだまだこれからも是非私たちと一緒にタロット世界の旅を楽しんで頂けると嬉しいです♪
瑠璃:
です♪
お読み頂き、ありがとうございました。
鑑定のご依頼も随時お待ちしています٩( ᐛ )و